免疫反応は体のどこで起きているのか?血液、リンパ液、リンパ球、抗原の循環について詳しく解説!

免疫学

はじめに

本記事では血液、リンパ液、リンパ球、抗原が体の中でどのように循環していて、どこで免疫反応が起きているかについて解説しています。今回は読者の皆様が免疫システムの全体像を把握できるようにという思いで記事を執筆しており、詳細な免疫反応には触れておりません。

免疫学はとても複雑で、頭が混乱してしまうことも多いと思います。本記事は免疫学を難しいと感じている方や、これから学びたいと思っている方にとって大切な内容となっています!

免疫学を学ぶ際、頭が混乱してきてしまったらその都度本記事を参照し、全体像を確認しつつ学習を進めていくのがオススメの読み方です!

それでは今回も楽しく学んでいきましょう!!

この記事のレベル

【難易度】★★★☆☆

【重要度】★★★★★

血液とリンパ液の流れ

血液は、「肺静脈→左心房→左心室→全身の血管→右心房→右心室→肺動脈」というように全身を循環しています(図1)。毛細血管からしみ出した血液の液体成分は組織液と呼ばれます。組織液は全身に張り巡らされたリンパ管によって回収されます。リンパ管に流れ込んだ組織液はリンパ液と呼ばれます。リンパ液は多くのリンパ節を通過した後、最終的に胸管と呼ばれる大きなリンパ管に合流します。胸管は鎖骨下静脈に接続しており、そこからリンパ液は再び血液循環に戻ります(図1)。

静脈と同様、リンパ管にも弁が存在しており、リンパ液は逆流しないようになっています。

リンパ球の流れ

B細胞やT細胞などのリンパ球は骨髄の造血幹細胞から生じます(図2)。B細胞はそのまま骨髄で分化が進みますが、T細胞は胸腺に移動し、胸腺で分化成熟します。リンパ球が作られる骨髄と胸腺を一次リンパ器官(または中枢リンパ器官)と言います。

一次リンパ器官で作られたリンパ球(図3の赤い丸)は、2.1項で解説した血液とリンパ液の循環に入り、全身を巡ります。ここで重要なことは、ナイーブB細胞及びナイーブT細胞は直接リンパ節に入り、リンパ組織(一次リンパ器官と二次リンパ器官)以外の組織には入っていかないということです。これはむやみに自己抗原に遭遇しないようにするためだと考えられています。図3をよく見るとわかりますが、リンパ球は毛細血管から直接リンパ節に入っており、リンパ組織以外の組織の毛細血管からリンパ球が滲出しているように描いていません。

高校や大学で免疫を勉強している人の中には、「自己抗原に反応するB細胞とT細胞は分化の過程で除去されるので、ナイーブ細胞が他の組織に入っても問題ないのでは?」と思った方がいると思います。確かに自己反応性リンパ球は発生の過程で除去されますが、それは100%正確ではありません。私たちの体には自己を攻撃しうるリンパ球が存在しているのです。したがって、むやみにナイーブ細胞を他の組織に入れたくないわけです。

ナイーブB細胞、ナイーブT細胞

抗原に遭遇したことのないB細胞、T細胞のこと。特異的な抗原に出会うと活性化され、B細胞は抗体を産生し、T細胞は細胞傷害性をもつようになる。

抗原の流れ

体内に侵入した抗原は主にリンパ節、脾臓、パイエル板のいずれかのリンパ組織で捕捉されます。全身を循環しているリンパ球はリンパ節、脾臓、パイエル板のいずれかのリンパ組織で抗原と出会い、活性化されます(図3)。このようにリンパ球(B細胞及びT細胞)の活性化が起こるリンパ組織を二次リンパ器官(または末梢リンパ器官)と言います。

本項では、これらのリンパ組織での抗原とリンパ球の動きについて見ていきましょう。

リンパ節

リンパ液に入り込んだ抗原は、リンパ液の流れに乗って運ばれ、最終的にリンパ節で捕捉されます。リンパ節に抗原が侵入する際は、抗原がそのままリンパ節に流れ込んでくることもあれば、抗原を捕捉した樹状細胞がリンパ液の流れに乗って運んでくることもあります。リンパ球は血管または(下流のリンパ節がある時は)輸入リンパ管からリンパ節に入り、輸出リンパ管から出ていきます。

脾臓

血液に入り込んだ抗原は血流に乗って運ばれ、最終的に脾臓で捕捉されます。脾臓には輸入リンパ管も輸出リンパ管もないので、リンパ球は血管から直接脾臓に入っていき、直接血管から出ていきます。

パイエル板

消化管から侵入した抗原は腸管に付随したパイエル板で捕捉されます。抗原はパイエル板に存在するM(microfold)細胞によって積極的に取り込まれ、M細胞直下に存在する免疫細胞に受け渡されます。パイエル板には輸入リンパ管がなく、輸出リンパ管のみがあるので、リンパ球は血管から直接パイエル板に入り、輸出リンパ管から出ていきます。

フェクター細胞の流れ

二次リンパ組織で特異的抗原に出会ったナイーブ細胞はエフェクター細胞に分化します。エフェクターT細胞(キラーT細胞またはヘルパーT細胞)の多くは血液に乗って感染部位に移動します。一部のエフェクターT細胞は抹消リンパ組織に残って他の免疫細胞の活性化または抑制化を助けます。

エフェクターB細胞は抹消リンパ組織に残って抗体を産生するものもあれば、骨髄に移動し、長期間に渡って抗体を産生するものもあります。

まとめ

  • 組織に染み出した血液を組織液と言い、リンパ管に回収された組織液をリンパ液と言う。リンパ液は最終的に血液循環に戻る。
  • リンパ球は一次リンパ器官(骨髄、胸腺)で作られ、血液とリンパ液を循環する。
  • 抗原は二次リンパ器官(リンパ節、脾臓、パイエル板)で捕捉される。
  • リンパ球は二次リンパ器官で抗原と出会い活性化する。ナイーブ細胞はエフェクター細胞へと分化し、一部のエフェクター細胞は感染部位に移動する。
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