DNAとは何か?DNAについて詳しく解説!

遺伝学

はじめに

DNAとは生命の設計図です。DNAの異常は癌や自己免疫疾患、感染症など様々な疾患の原因となり得ます。ですので、DNAに関する知識は身体の仕組みを知るためだけでなく、病気のことを理解する上でも非常に重要です。

今回は基本的な事項ですので、他の記事と併せてぜひ理解を深めていただきたいです。

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DNAとは

それでは、DNAについて説明します。DNAとは日本語ではデオキシリボ核酸、英語ではdeoxyribonucleic acid、略してDNAと言います。

DNAはヌクレオチドと呼ばれる分子で構成されています(図1)。さらにヌクレオチドはリン酸+糖+塩基の3つで構成されています。ヌクレオチドを構成する塩基は4種類あり、それがアデニン(adenine; A)、シトシン(cytosine; C)、グアニン(cytosine; G)、チミン(thymine; T)です。その他の構成成分であるリン酸と糖は4種類のヌクレオチドで共通しています。

塩基がA、C、G、Tの4種類あるので、DNAを構成するヌクレオチドも4種あるということですね。

この4種類のヌクレオチドが規則的に結合した化合物をDNAと呼びます。

ヌクレオチドの結合様式

DNAとは4種類のヌクレオチドが規則的に結合したものであると説明しました。本項では、この結合様式について見ていきましょう。

ヌクレオチド同士は図2のようにホスホジエステル結合と呼ばれる結合の仕方でつながっています。図2のようにホスホジエステル結合でつながった長いヌクレオチドを「一本鎖DNA」と呼びます。「一本鎖DNA」と、一本鎖であることを強調したのは、DNAは通常二本鎖構造をしているからです。細胞内のDNAが一本鎖構造をとるのはDNA複製や転写の時だけであり、ほとんどの場合一時的な状態です。したがって、単にDNAというときは二本鎖DNAを指しています。

生物の教科書等にはDNAを図形で略したわかりやすいものもありますが、ここでは皆さんにDNAの本質を理解していただきたいので、丁寧にDNAの化学式を書きました。覚えなくて良いので(私も暗記してはいません)、DNAの中身がどんな分子でできているか、どこがどのようにつながっているか、塩基(A、C、G、T)はどこが異なっているかなど、ざっくりと構造を観察してください。図2をよく観察してみると、糖の炭素原子に1’とか2’とか番号が振られていますよね。糖や塩基のような環構造した化合物は縮合環と呼ばれ、図2のように位置番号が振られます。糖に記載されている位置番号は、DNAを深く理解する上でかなり大事ですので、その位置はよく確認しておいてください。特に糖の3’と5’は、新しいデオキシリボヌクレオチドが結合する位置なので、とても重要です。

ちなみに、この番号の付け方はかなり難しいらしく、有機化学の専攻で大学院を卒業してる友人でも番号の付け方はよくわからないと言っていました。なので、番号の付け方自体はそこまで重要でないと思います。ふ~ん、といった感覚で確認しておいてください。

ただし、3’と5’の位置はかなり重要ですので、そこだけは確実に覚えてください!

DNAは二重らせん構造

DNA鎖が伸張されるときは、必ず糖の3’末端に新しい新しいヌクレオチド(=デオキシリボヌクレオチド三リン酸)の5’のリン酸基が結合していきます(図2下部)。3’→5’方向にDNAが合成されることはありません。つまり、DNA鎖には5’→3’という方向性があるのです。このようなDNA鎖の方向性を”極性がある”と表現します。これは重要なのでぜひ覚えてください。通常塩基配列は左を5’末端、右に3’末端にして書きます。

DNAに方向性があるということは、5’→3’方向にDNAの塩基配列を読んでいくのと、3’→5’方向に読んでいくのとでは、書かれている遺伝情報が全く異なるということです。したがって、DNAの配列は4種類の塩基を用いて、A、C、G、Tの文字列で表現することができるのです。

DNAは方向性の異なる2本の一本鎖DNAが、2本平行に並んだ構造をしています(図3)。図3のDNAの模式図のように、一方のDNA鎖は上(5’)から下(3’)の方向性で、もう片方のDNA鎖は逆に下(5’)から上の方向性(3’)です。

また、塩基はAはTと、GはCと対をなして結合します(これを塩基対、base pair; bpと言います)。AとT、GとC以外の塩基対の結合はエネルギー的に安定しないので、結合することはほとんどありません。ほとんどと書いたのは、稀に間違った塩基対同士がペアをなしてしまうことがあるからです。これがDNAの変異であり、様々な疾患を引き起こす原因になることもあれば、一塩基対が変わったところで何も変わらないこともあります。

上述したDNAの極性や塩基同士の水素結合により、DNAは右向き二重らせん構造を形成します(図3)。二重らせん構造をしているのはエネルギー的にこの構造が一番安定だからです。

塩基対の水素結合

塩基対の詳細は図4に示した通りで、AとTは2本の水素結合、GとCは3本の水素結合で結合しています。このA、C、G、Tの4種類の塩基の配列の組み合わせで、何のタンパク質をいつ、どれだけ合成するか、心臓の作り方、血管の作り方、ウイルスに感染したときの対処法など、様々な情報が書かれています。したがって、生命の設計図は、4種類の文字で表すことができます。ここで塩基配列を文字で表現してみましょう。(配列は適当です。)

5’-AGTCAGTCGAAAGTCAGTCGAAATGTCGTAATGTCGTAGCGCGCGTG-3’

3’-TCAGTCAGCTTTCAGTCAGCTTTACAGCATTACAGCATCGCGCGCAC-5’

どうでしょうか?何だか暗号みたいですよね。でも、ここまで読んで下さった皆さんなら、この意味や構造が想像できると思います!ぜひ頭の中で、二重らせん構造を想像してみてください!

まとめ

  • DNAはヌクレオチド(リン酸+糖+塩基)が規則的に並んだもの。
  • 塩基及びヌクレオチドはA、C、G、Tの4種類ある。
  • 生命の設計図はA、C、G、Tの組み合わせ。
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